研究日誌

哲学と哲学史を研究している人の記録

コンラート=マルチウスの感覚論

完成しつつある論文のための作業の一環としてHedwig Conrad-Martius, Zur Ontologie und Erscheinungslehre der realen Außenwelt (1916)の一部を読む。「われわれの意識から独立して存在する世界(の一部)がそのようなものとして与えられる感覚的経験はどのような記述的特徴を持つのか」という、実在論現象学がその名の通りに実在論的かつ現象学的であるためには避けることが難しいであろう問題に正面から取り組んだ重要な著作で、インガルデンにも(たぶんかなり強い)影響を与えている。拾い読みするといろいろ面白いことが書いてあるんだけど、とにかく読みにくいので毎回どこかで挫折してしまっている。とはいえ、感覚的経験の特異性を強調するときに「自分にとって自由にならないものとしての自分の身体」を持ち出している一節は、そこだけ取り出して検討することに値する論点だと思う。