レヴィナスが親イスラエル的だということは前から知ってはいたのだが、パレスチナのニュースを見ていてそのことをふと思い出し検索してみたら、次の論文に突き当たった。
- 早尾貴紀、「シオニズムに対するレヴィナスとデリダの距離」、『Supplément』第3号、2024年、32–37頁。
この雑誌はオンラインで無料公開されている。早尾論文が収められた号は以下。
この論文は、同じ号に収められた下記二篇の論文へのコメントではあるが、独立して読めるようにもなっている(そういうふうに読んでしまいました。これらの論文もあとで読みます)。
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小川歩人「初期デリダにおける暴力の主題――植民地主義とアルジェリア戦争を背景として――」、『Supplément』第3号、2024年、1–16頁。
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若林和哉「レヴィナスのライシテ論と「イスラエル」――キリスト教批判の観点から」 、『Supplément』第3号、2024年、17–31頁。
早尾論文は興味深い論点を淀みなく呈示していて、その当否を判断することは専門家のあいだでの議論に委ねるとしても、とにかくその明晰さに感銘を受けた。レヴィナスが折にふれて政治的シオニストとして振る舞ってきたことを指摘する際の手続きも非常にしっかりとしており、私は早尾にかなり強力に説得された。
というような感想をTwitter(だったもの)に垂れ流しがてら他に何か読むもんありますかねみたいなことを書いたら、レヴィナス研究者の石井雅巳さんにいくつかの情報を教えてもらった。
石井さんによると、さしあたりアクセスしやすいところでは、以下からはじめるのがよいとのこと。
- ジュディス・バトラー、『分かれ道——ユダヤ性とシオニズム批判』、大橋洋一・岸まどか訳、青土社、2019年。
- 渡名喜庸哲、「レヴィナスにおける〈東方〉についての極端な思考──ジュディス・バトラーからの批判に対して」、杉村靖彦・渡名喜庸哲・長坂真澄編、『個と普遍——レヴィナス哲学の新たな広がり』、法政大学出版局、2022年。
また、レヴィナスのシオニズムやイスラエルに対する見解を知るには、以下の本の第V部が有用とのこと。
- 藤岡俊博、『レヴィナスと「場所」の倫理』、東京大学出版会、2014年。
日本語以外の文献としては、以下のものを教えてもらった。バトラー批判とのこと。
- Michael. L. Morgan, Levinas's Ethical Politics, Indiana University Press, 2016.
この本については、石井さんが『レヴィナス研究』誌に書評を寄せている。
- 石井雅巳、「Michael L. Morgan, Levinas's Ethical Politics, Bloomington: Indiana University Press, 2016.」、『レヴィナス研究』vol. 1、103頁。
ごく短い書評のなかに要点がまとまっているので便利だった。こちらは以下から無料で入手できる。
というわけで、やっぱりこういうことは専門家に教えてもらうのが一番ですね。私も専門家としてフッサール関連読書案内のようなものを公開しています。
このブログで過去に書いたレヴィナス関係の記事はこちら。