研究日誌

哲学と哲学史を研究している人の記録

2012年大学入試センター試験「倫理」第四問問7(フッサールに関する問題)について

今年の大学入試センター試験の「倫理」で「フッサールの思想の記述として最も適当なものを、次の1から4のうちから選べ」という問題が出た(こちらで見ることができる)。選択肢は以下の通り。 人間は自己の在り方を自由に選択するため、実存が本質に先立つ。…

フッサールの初期超越論的観念論関連草稿(3)

引き続きMs. B I 4を読んでいる。現実的経験だけでなく可能な経験もそこに位置づけられることになる純粋意識はどのようなものとして存在するのか、純粋意識と経験的な(あるいは内世界的な)意識の関係はどのようなものなのかという問題が論点の一つであるこ…

フッサールの初期超越路的観念論関連草稿(2)

B I 4の続き。モナド論っぽい話題が出てきてから話がどんどん思弁的な方向に進み、最後には本人が思弁であることを認めたところで突然終わる。二次性質とかEinfühlungに関して面白そうなことを書いているだけにちょっと残念。で、突然終わった後からは、また…

フッサールの初期超越論的観念論関連草稿(1)

本格的に仕事を再開。年末年始で中断していたフッサールの未公刊草稿B I 4(1908年ないし1908年の執筆)のトランスクリプトを読む作業の続き。Jean-François LavigneのHusserl et la naissance de la phénoménolgie (1900-1913) [2004]で引かれている箇所を…

コンラート=マルチウスの感覚論

完成しつつある論文のための作業の一環としてHedwig Conrad-Martius, Zur Ontologie und Erscheinungslehre der realen Außenwelt (1916)の一部を読む。「われわれの意識から独立して存在する世界(の一部)がそのようなものとして与えられる感覚的経験はど…

最近のブレンターノ研究

年始に一度完全にオフにしてしまった頭を仕事仕様に戻すにはさっと読めそうな未消化文献を片付けて達成感を得るのが手っ取り早いだろう、ということで、Pietro Tomasi, “The Unpublished ‘History of Philosophy’ (1866–1867) by Franz Brentano” [2007]を読…

フレデリック・C・バイザー『理性の運命:カントからフィヒテまでのドイツ哲学』

年末から半分趣味で読み始めたFrederick C. Beiser, The Fate of Reason: German Philosophy from Kant to Fichteが面白い。理性と信仰という古典的な問題が「汎神論論争」というかたちで18世紀後半のドイツ(語圏)の哲学界にどのようにあらわれたのかを、…