どういう経緯によるのかはわからないけど、Springerの電子書籍の一部(といっても大量)が無料でダウンロードできるようになっている。
というわけで調べてみたところ、HusserlianaやHusserliana MaterialienやEdmund Husserl Collected WorksやPhaenomenologicaも部分的に無料になっていた。他にも検索するといろんなものが出てくる。素晴らしいですね。
しかしこれだけ大量にあると、片っぱしからダウンロードするにも多すぎるくらいなので、個人的なおすすめ文献リストを若干のコメントと一緒に作っておきます。選択の基準は、自分で全部ないし部分的に読んだもののうち、おもしろかったものと、(おもしいかどうかは別として)必読だと思ったもの。あとは(まだ)読んでないけど信頼できる人がすすめていたり、すでに定評がある文献も。
ブレンターノ学派、初期現象学
- Die Erkenntnistheorie von Roman Ingarden - Springer
- Intentionalitätstheorie beim frühen Brentano - Springer
- Die Ontologie Franz Brentanos - Springer
- Husserl’s Position in the School of Brentano - Springer
- Content and Object - Springer
- Von Bolzano zu Husserl - Springer
- Judgment and Sachverhalt - Springer
- Speech Act and Sachverhalt - Springer
- Readings on Edmund Husserl’s Logical Investigations - Springer
- One Hundred Years of Phenomenology - Springer
- Husserl’s Logical Investigations Reconsidered - Springer
1-3は分析哲学の道具立てを駆使してインガルデンやブレンターノの立場を再構成するという手法で書かれた本。博士課程のはじめの方に読んで、博論にいたるまでの私の研究にだいぶ大きな影響を与えたと思う。とくに2は、タイトルの地味さが惜しまれる名著。4は、ブレンターノ学派の主要な哲学者(+ボルツァーノ)の基本的な主張が、フッサールと関係するものを中心に手堅くまとめてあって、その辺に関する入門書として最適。(おもしろいかどうは別として)フッサール研究者には全員読んでおいてほしい本。5はトヴァルドフスキ研究書。伝統的形而上学と初期現象学の隠れたリンクに関する重要な指摘を含む。6は、フッサールがボルツァーノの「命題自体」概念を受容する際にロッツェのイデア論解釈がどういう役割を果たしたかについて詳しく論じた貴重な本。7はライナッハの全体像を描く研究で、入門書としても読めるかも。8もライナッハ関係。マリガンとバリー・スミスのそれぞれによる気合の入りまくった論文もいいんだけど、じつはキュネのやつがかなりおもしろい。そして巻末のAnnoted Bibliographyの情報量が凄まじい。9はフッサールの『論理学研究』に関する文献を集めた古い論文集で、さすがに今読まなくてもいいかもというものもあるんだけど、部分全体論に関するソコロウスキの論文はいまだに定番文献で、あと、なぜかあまり言及されないけど真理と明証に関するパツィッヒの論文はたいへん素晴らしい。10と11は、『論理学研究』刊行100周年をきっかけにして出版された論集。個人的なおすすめは、10のベルネット、ブノワ、ザハヴィ、ソコロウスキ論文と、11のセベスティック、キュネ論文。
フッサール研究の古典と定番
- Das Problem des Ich in der Phänomenologie Husserls - Springer
- Kausalität und Motivation - Springer
- Phänomenologie der Assoziation - Springer
- Perspektiven transzendentalphänomenologischer Forschung - Springer
- Die Fundamentalbetrachtung der Phänomenologie - Springer
- The Formation of Husserl’s Concept of Constitution - Springer
- Lebendige Gegenwart - Springer
- Husserl und Kant - Springer
- Studien zur Phänomenologie 1930–1939 - Springer
- The Development of Husserl’s Thought - Springer
- Husserl-Ausgabe und Husserl-Forschung - Springer
- Husserlian Intentionality and Non-Foundational Realism - Springer
この辺はぜんぶ、関連する話題を取り上げるなら読まないといけないか、読んで損することはないものばかり。1はフッサールの自我論について修論レヴェル以上の何かを書くならいまだに必読。修論までなら、先行研究としてこれと田口茂『フッサールにおける“原自我”の問題―自己の自明な“近さ”への問い 』を押さえておけばとりあえず十分かも。2は『イデーンII』のお供に。3はとにかくフッサール現象学と当時の心理学との関係に関する情報量がすごい。気になる節だけ拾い読みしても役立つ情報が見つかる。4に入っているヘルトの間主観性論文とクレスゲスの生活世界論文は、それぞれ古典的な論文。5はあまり言及されないけど、フッサールの世界論としていくつかの重要な指摘を含んでいると思う。6はとにかく明晰。フッサール研究者だけでなく、多くの人に読んでほしい本。知覚の哲学に興味のある人も読んで面白いと思う。7はかの有名なヘルトの『生き生きした現在―時間と自己の現象学 』の原著。8も必読の基本文献。フッサールとカントおよび新カント派の関係についての基本的な情報はこれを読めばだいたい手に入る。9はフィンクの初期の論考を集めたもの。フッサール本人のお墨付きであることで知られるフッサール論など。10はタイトルからもわかるように、フッサールの思想の発展を時系列に沿って再構成した本。地味な雰囲気を放っているけど、実は重要な問題提起がいろいろなされている、もっと多くの人に読まれていいはずの本。11に入っている論文のうち、非客観化作用に関するメレ論文とノエマに関するベルネット論文はそれぞれの話題に関する必読文献。12は、今読むといろいろ不満なところが出てくると思うけど、卒論を書くときにたいへんお世話になった本。とりわけ最初の5章くらいまでは『論理学研究』の第五研究や『イデーンI』を読むときの副読本として非常に有益。
まだまだいろいろあるんだけど、あまりたくさん書くときりがないのでこの辺で。