研究日誌

哲学と哲学史を研究している人の記録

アメリカ哲学における現象学とその不在の歴史

年末年始の読書は10月に出たJonathan Strassfeld, Inventing Philosophy’s OtherPhenomenology in America (University of Chicago Press, 2022)に決めた。

アメリカの哲学メインストリームにおける現象学とその不在という主題をめぐって、ふたつのパートに分けてもいいような章をあえて交互に登場させるという凝った構成になっている。一方のアラビア数字が振られた章では、第一次大戦前からはじまるアメリカにおける現象学受容や、戦間期・戦後のアメリカ哲学を取り巻く制度的な事柄の歴史が辿り直される*1。もう一方のアルファベットが振られた章では、アメリカにおける現象学の発展を担った4人の人物(Marjorie Grene、Alfred Schütz、Hubert Dreyfus、Iris Marion Young)の思想と人生が再構成される。

この構成にどういう意義があるのかについては最後まで読まないと判断できないけど、Chapter 3まで読んだ印象としては、読み手を飽きさせないという利点は間違いなくあると思う。

*1:ただしChapter 1は除く。現象学入門といった趣のこの章では、フッサール、ハイデガー、サルトル、メルロ=ポンティの基本的な考えが現象学に馴染みのない読者も念頭において紹介される。現象学についてある程度知っているという人は、ここは飛ばしてもいいと思う。私は、フッサールに関する最初の節を読んでいて細かいところでいろいろ気になってしまったので、かなり雑な斜め読みで済ませてしまった。