研究日誌

哲学と哲学史を研究している人の記録

現象学

フッサールと「ナイフ研ぎ」のエピソード

少年時代にナイフを貰ったが、切れ味が気に入らず研ぎすぎて台無しにしてしまった——レヴィナスがフッサールから聞いたというこのエピソードは、広く知られているのではないかと思います*1。この記事のタイトルを見ただけでピンときたという人もけっこういる…

フッサールの科学観

フッサールはある講義で、次のように述べています。 人間の認識を並外れて拡張するためには、分業の必要が拒否しがたくでてくる。もともとはひとつの学問が、数学、物理学、生理学等々に分かれたのだ。そして、こうした仕方での制限によってのみ、われわれの…

「フッサールの社会哲学」補遺その2:「構成」について

「その1」の最後で「その1」は「その2」があることを保証するものではありませんという逃げをいちおう打っておきましたが、実際には、いくらでも補足を書き足せます。今回は、構成に関する節についてもう少し。 「社会的現実の構成」という節では、フッサー…

尾高朝雄の見たフッサール

この記事でも紹介したように、尾高朝雄は1930年にフライブルクでフッサールに学んだのですが、そのときフッサール一家と家族ぐるみの付き合いをしていたようです。 以下は、フッサール家でのクリスマスディナーに招かれたときの様子について、尾高が1935年に…

「フッサールの社会哲学」補遺その1

この記事を読み直していて、ちょっと補足が必要かもしれないと思ったところを見つけました。 「社会倫理学」という節の冒頭には次のようにあります。 最後の節では、フッサールの社会倫理学の構想がごく簡単に紹介されます。ここまで扱ってきたフッサールの…

尾高朝雄の生涯

www.amazon.co.jp ちょっと前の話になりますが、上の論集に「現象学者としての尾高朝雄——1930年代の社会団体論を中心に」という論文を寄稿しました。日本哲学研究という文脈では尾高はそれほど中心的な人物ではないため、伝記的な事実についても調べ物をして…

フッサールの社会哲学

Encyclopedia of the Philosophy of Law and Social Philosophy(『法哲学・社会哲学百科事典』)という事典 link.springer.com にフッサールについての項目 link.springer.com を書きました。いまのところオンラインでしか読めないのですが、どうやら来年に…

フッサール入門のための短い読書案内

この記事のPDF版をこちらからダウンロードすることができます。 はじめに 読書案内 まずは本人の書いたものをちょっと読んでみる やたら細かい知覚の分析をよりよく理解し、壮大な構想との接点を垣間見る さらに先に進みたい人のためのヒント はじめに この…